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ドニエプル攻防決戦1941(2009年/ベラルーシ) ネタバレあり感想 敷居高い系戦争映画の極みって感じ。

 

一般人おいてけぼりどころか戦史と戦争映画マニア以外お断りみたいな雰囲気すら漂ってて笑っちゃった。

 

『ドニエプル攻防決戦1941』

(Dneprovskiy rubezh)

ドニエプル攻防決戦1941(字幕版)

ドニエプル攻防決戦1941(字幕版)

 以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

 

 ストーリー

第二次世界大戦独ソ戦が始まって間もない頃のとある戦いを、一人の司令官を通して描く。 

 

 

 感想

ヒロインの女の子ゾーヤちゃんがめちゃめちゃかわいい映画。

 アマゾンプライムで観たんですが、その映画紹介が適当な事を書いてるだとか正しい戦史の時系列はどうだとかそういう批判もありつつ、この先に嵩みに嵩んだコアすぎる要素に手がつかなくなるので一旦置いておきます。

 

 

 

 

とにかく戦場と戦況を再現する事に注力しつつ、モダンな戦争映画そのものに対するリスペクトを混ぜ込んだ作品という印象を受けた映画でした。

ただフィルムっぽい質感の映像とCGによる戦闘機や爆風描写は正直あまり馴染んでいないように感じました。

 

劇中で銃弾を受けて倒れる兵士の演出や全体的な映画のテンポ、劇伴のチープな使い方など、露骨に古い戦争映画を意識して作っている事は誰の目にも明らかなので、フィルムっぽい質感もまたその演出のひとつである事はわかります。

そこに物凄く今風なカメラアングルとCGとカット割りが混在するので、イメージとして何がやりたいのかはわかるんですが、その違和感をずっと引きずる形にもなるので正直見辛い感じがしてしまいました。

そしてまずそもそもこの映画が昔の戦争映画に対するリスペクトの姿勢を示しているという事自体が、戦争映画が好きな人間以外にはまるで分からない点が、僕がこの映画に対して敷居が高いんじゃないかって思った要素その1です。

なんか古臭い、っていうのは誰でも分かると思うんですが、面白さを込めた部分が前述の狙撃される歩兵の倒れ方だったりとか、ある程度この手の映画に馴染んだ人間にしか伝わらないレベルで構成されている気がします。

 

加えて、名作とされるクラシックな戦争映画に対するオマージュなどもそれなりに確認できます。

例えばゾーヤちゃんが少し狂気じみているダンスパーティの幻覚のようなものを見るシーンは『戦争のはらわた』のオマージュだと思いますし。

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そしてストーリーの部分、ドラマの部分がなんとも言えない取ってつけた感に溢れている様に僕は感じました。わりと深刻なレベル。

中盤辺りまで人の物語が見えてこない感じです。

恋愛描写がある事はわかるけどその詳しい流れがいまいち掴み辛い、みたいな、話がストレートに入ってこない感覚がありました。

 

その人間ドラマパートの薄さをカバーする、というかこっちを中心にこの映画は作られてると思うんですがとにかく戦況がどうなっているのかという点を執拗なまでに詳しすぎるほどに徹底的に描写していました。

矢継ぎ早に日付と戦地、そしてドイツ軍とソ連軍の行軍ルートが地図上で示されながら、次々と様々な戦場での戦いが描かれていきます。

シーンによっては1分にも満たない戦闘シーンなどもありますが、基本的にこの映画は戦いまくっています。

 

敷居が高いと感じた要素その2がこれです。

登場する地名が多すぎますしそれらは例外なく聞き慣れない地域名ばかりで、進軍するドイツ軍と迎え撃つソ連軍のルートがどうなっているのかも一瞬で分かり辛い上に、各登場人物の顔と名前が一致する前に彼らが移動したり死亡したりして、しかもいつの間にか日付が変わっていたりしてと、実際にその地で起きた戦いの知識が前提にある人しか付いていけないような見せ方になっているように思います。

 

前提として両軍がどういう動きをしたのか、その結果どうなったのかを知った上で見たら、各登場人物(多分いずれも実在しない人物だと思います)がどこで何をしていたのかという点が把握できるんだろうなと観ながらずっと思っていました。

ソ連軍が次第に追い詰められているらしいことがそれらの史実を知らなくても理解できるであろうタイミングは、おそらく終盤も終盤辺りの市街戦シーン辺りだと思います。

 

 

 

 

 

戦況に注力しているからなのか、戦闘シーンそのものにもかなり力が入っている映画でした。

もちろん古典戦争映画に対するリスペクトを加えつつではあるんですが、特に戦闘シーン全般で言えるのが、異常なほどの兵器再現精度です。

登場火器の全てに対してリアリティを追求しているのが明白。

僕が特に詳しくわかる範囲で言えば、登場するドイツのⅣ号戦車の再現度が本当にどうかしてしまっている領域に達してました。

他の映画でここまでがっつりⅣ号戦車を再現したものって、ちょっと思い当たりません。

車体と砲身の位置や全高全長のバランス、走行・射撃時の挙動など、何が制作スタッフをここまで駆り立てるのか全くわからないレベルの再現がなされていました。もうこれ本物だよ。

戦車はドイツのⅣ号以外は登場しませんが、兵員輸送車両でもあったドイツの装甲車やソ連のBA‐20っぽい装甲車なども登場しています。

車両だけでは無く、歩兵の携行する火器類も実に様々なものが登場していました。

兵器好きな層を狙い撃ちしに行ってるとしか思えません。

敷居が高いと感じる要素その3がここにあるんですが、みどころが戦闘シーンにあるようで戦闘シーンよりも登場兵器の再現度に集約されているように思えるんですよ。

一定の層には間違いなくバカ受けする事間違いなしですが、そうでない人からしたらもういよいよ魅力が分からない映画、という風に捉えられても仕方ないような、それだけ的を絞った作りになっているような印象です。

 

 

 

つまり端的に言えばミリオタの為の一本って印象を僕は受けたんですが、映像作品としての芸術性という点が地味に強いのが面白いところでもあると思います。

所々ものすごく映えるカットが登場するんですよ。

塹壕で蹲る少女とその近くで撃破され沈黙する戦車とか、勝利に湧く兵たちの足元で重傷を負い今にも死にそうになってるソ連軍兵士とか、やたらと印象的なシーンが多いです。

そういうの目当てで観てみる価値は十分にある映画だと思いました。

 

個人評価:★★☆☆☆

史実を元にして、おそらく内在するストーリーや人間ドラマよりも、戦況そのものをフォーカスして作り上げたのであろうミリタリー全開な映画でした。

ドニエプルの攻防戦に対する僕自身の知見の無さもあって何が起きているのか分からない、ただひたすら臨場感と古風な演出が混ざり合った戦闘シーンと、散発的な人間ドラマが繰り返される映画という印象を受けましたが、詳しい人からしたらきっととんでもない名作に写っているんじゃないかと、そういう雰囲気を醸し出しまくっています。

 

 この映画は以下の配信サービスで視聴できます。

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ではまた。

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