スターリングラード大進撃 ヒトラーの蒼き野望(2015年/ロシア) ネタバレあり感想 邦題付けた奴の不幸を願いそうになるレベル。とても良い雰囲気の戦争映画。
良い映画には良い翻訳タイトルが必要だってそれ一番言われてるから。
でも邦題だけがおかしいかと思ったらプライムビデオの作品概要もなんかズレ気味だし、それどころか原題にも要素ほぼゼロのベルリンの文字が刻まれていて視聴後の混乱が凄まじい。
良い映画だけど。
(Doroga na Berlin)
予告:
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
重要な命令を伝えられなかった男が死刑を言い渡されるも、執行前に部隊が壊滅したので、生き残った護衛と共に本部を目指す。
■感想
アクション要素はアクセント程度に、第二次世界大戦の独ソ戦を舞台にした物語である事を印象付けるくらいに留められていて、二人のソ連兵を軸にしたヒューマンドラマが中心に描かれていく映画でした。
その短く演出される戦闘シーンの中で出てくるKV-2やT-34やⅣ号戦車などの戦車の活躍や残骸を見逃さずウキウキするのが戦車ファンの常。
こっそり紛れ込んでいるイギリスのマチルダとか見つけて「オッホwww」ってなれ。
動く戦車が映画で観たい、という人には少ないながらもそれなりに満足感が得られる戦闘シーンだと思います。迫力もあるし。
命令を届けようとしたら目的地付近が思ってる以上に激戦極まっていて任務に失敗した男オガルコフは、それを敗走と見なされ銃殺刑を待つ身に。
オガルコフの護衛として配属されたズラバエブは規律を徹底的に重んじる堅物。
オガルコフの刑が執行されるより先に、現地がドイツ軍の占領に遭った為、ズラバエブはオガルコフの処遇を決めて貰う為に二人で軍司令部のある本部を目指す事になります。
この二人の成長と変化、そして別れが中心に描かれる映画となっています。
当所は脱走する脱走する!と駄々を捏ねていたオガルコフと、反逆者とは絶対にコミュニケーション取りたくないマンだったズラバエブですが、本部までの旅を通じてお互いに相手を理解するようになり、特に共にドイツ軍の防衛線を突破して以降は親友となります。
この二人の変化の分かりやすさですよ。
堅物はユニークさを垣間見せるようになり、反逆者扱いの男は仲間のために奮闘するようになる、そして死ぬはずだったオガルコフは生き延び、ズラバエブは最後は空爆で死亡してしまいます。
捻りの無い展開とも言えるかもしれませんが、そういうシンプルさが結局一番人間ドラマが栄えるようにも思います。
僕はかなり好きです。
冒頭で発狂した兵士を上官がなんのためらいも無く銃殺するどころか「なんでお前撃たなかったん?」と当たり前のようにオガルコフに問うシーンがあったり、そもそもこの映画自体、銃殺刑待ちの男が刑の執行が曖昧になり、その処遇を定めてもらう為の場所に向かうという内容だったり、地味に当時のソ連軍内の人の扱い方に対する黒さも描いていました。
いかにもな戦争映画らしい陰鬱さもしっかり漂わせていました。
戦場を通して成長する二人の人間ドラマである本作。
だからこそ改めて、邦題が酷すぎると思います。
なんなのヒトラーの蒼き野望って……。
スターリングラードに大進撃なんてしませんし、戦争アクション映画でも無いですし、 なんならこの映画、ドイツ軍はドイツ軍という舞台装置でしか登場しませんよ。
主軸に在るのがソ連の二人の男の物語であって、それを彩る為に戦争という要素が付随しているような作りのこの映画のタイトルには間違いなく相応しくないと思います。
■〆
個人評価:★★★☆☆
観終った後のとっても良いしんみり感に酔いつつ改めて邦題を観て脳が混乱する映画でした。
いやマジでなんか別の映画間違って観ちゃったのかなって自分を疑いましたもん。
ラストシーンで登場したドイツの村の一角がベルリンだったってことでしょうか。
原題をお手軽グーグル翻訳にかけると『ベルリンの道』ってタイトルになるんですよ。
あるいは、劇中で二人が目指していた本部が、位置するのがベルリンって事でしょうか。そうなると1942年という舞台設定の時期と噛み合わないように思いますし、よく分かりません。
二人の男の関係性とその変化を戦争を通して描いた映画です。
かなりフラットにヒューマンドラマとして作り上げられていますし、戦いや旅を通じて友情が築かれる様を描くというとてもオーソドックスな内容なので、分かりやすく面白い戦争映画って印象でした。
この映画は以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。