フィアー・インク(2016年/アメリカ) ネタバレあり感想 手の込んだドッキリなのかリアルに起きている事件なのか、絶対に最後まで分からせたくないという鉄の意志を感じた。
ホラー映画そのものをメタ的に取り扱う系の映画のひとつ。
『フィアー・インク』
(FEAR.INC)
予告:
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
リアルガチな恐怖体験を提供してくれる会社にせっかくなので依頼してみたらヤバいよヤバいよ。
■感想
ホラー映画オタクの逆玉成功ニートの主人公が、フィアーインクなるホラー映画のような体験をさせてくれる会社に依頼したら只事では無くなった、
かと思えば全ては恋人と友人もグルになった壮大なサプライズでした、
と思いきやドッキリ中に主人公がうっかり仕掛け人の一人を絞め殺してしまい、フィアーインクから逃走を図ろうとするも失敗、恋人は殺害されてしまう、
と思わせておいてからの、そこまでが一連の壮大な計画でした!打ち上げだ!宴だ!
とホッとする結末を迎えた様に見せかけて、最後には真の恐怖体験が待ち受けている、
というオチを読ませない事に全力を出し切っているタイプの映画。
主人公が身勝手にフィアーインクに連絡して惨劇が始まったのに、主人公はそれをゲームだと思い込んでいてやたら能天気に楽しんでいる、というギャップとイライラが中々に性格の悪い面白さに繋がっている映画です。
そんなアホな主人公にいよいよ天誅が降るかと思われる中盤辺りで、全てが壮大なドッキリでしたと明かされると同時に、主人公が仕掛け人を殺害してしまった事で全く別の問題が発覚する、という予想外な方向性に進むので、この映画の最終的な着地点は本当に読めなくなります。
そういう面白さが確かにあるんですが、それもまた踏まえての一連の計画でした、と繋がり、しかし最後にはクライマックスらしく本当に主人公と恋人と友人はフィアーインクに殺害されて終わってしまいます。
ホラー映画としてのメンツをしっかり保つ形のオチが付きますし、コメディ要素もかなり上手くホラーの中に溶け込ませているので僕は雰囲気とか結構好きな映画でした。
根幹の発想は『キャビン』と似ている気がします。
ただ「ちょっとそれどういう事なの」っていうシーンもまぁまぁあった気がします。
例えば、主人公が仕掛け人を殺害してしまったので恋人と一緒に遺体を砂漠に埋めに行く途中、スピード違反で警察に車を停められてしまうシーンがあります。
この警察はフィアーインクの仕掛け人らしいんですが、それが主人公にばれる瞬間にフィアーインクの車に跳ねられてしまったり。
というか、この砂漠に死体を埋めるイベントのきっかけになる、主人公が仕掛け人を絞殺してしまうという展開も、この時点で主人公は本気で殺しにかかっている訳で、演技でしたー!って仕掛け人側が元気に最後に登場するのは、ちょっと無理在るようにも思います。
全ては計画の一部だとしても、アドリブでは済まされない凄まじい事態が中盤の展開には特に多いように感じました。
今観ている物が壮大なドッキリの一部なのかリアルに事件が起きているのか分からなくさせようとするあまり整合性が取れなくなったような印象を受けました。
多分この映画、二周目は観ない方が良いタイプの映画なのかもしれません。
オチを知った上でよく考えてしまったら、逆におかしい点が見えてくるので、初見の時の勢いを大事にした映画なんでしょうね。
劇中でも言及されていたデヴィッド・フィンチャー監督の『ゲーム』という映画が、この映画の基本構成の元ネタそのものらしいです。
僕は『ゲーム』は観た事が無くて、だからこそ最後の最後まで劇中で起きている事が現実なのかあくまでゲームなのかハラハラしながら観る事が出来たんですが、『ゲーム』を知っている人からするときっとオチや諸々の伏線も読めてしまうんでしょうね。
でも、そもそもこの映画自体がパロディを前提にしていて、もっと言えばホラー(や、それに類する映画の)マニアがより楽しめる作りになっているはずです。
物語構成そのものもパロディしているような感じなので、好き嫌いは個人のマニア度合いなんかでも左右されそうです。
■〆
個人評価:★★★☆☆
ホラー映画の形式やある種の文化そのものをパロディしたタイプの映画です。
ところどころ粗削りな感じがしますし整合性も良く考えたらあんまり取れてないような気がしますが、それでも初見時の「いま起きているのはドッキリなのか現実なのか」という面白さは中々のモノだと思います。
楽しめました。
この映画は以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。