エクス・マキナ(2015年/イギリス) ネタバレあり感想 ギリギリ恋愛映画として楽しめる可能性を秘めたSFスリラー。
強固なセキュリティシステムを酒癖で全て無意味なものにする社長すき。
『エクス・マキナ』
(Ex Machina)
予告:
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
世界最大のIT企業の社長が極秘に開発した人工頭脳のテストを社員の一人が行う。
■感想
明らかにグーグルを意識したIT企業の社長が、開発した人工知能のテストの名目で善良な社員を巻き込んで隠れ家兼研究施設でAIの研究を進めた結果AIにしてやられる映画。
知性や感情、意識を持っているかのテストをする事になった主人公ケイレブと対象のAIエヴァの交流を中心に、未知数の人工知能の性能では無く人間性が内包する非合理的な判断や感情といった部分が描かれた映画だと思いました。
ケイレブはチューリングテスト(機械が思考するかどうかのテスト)を通してエヴァに惹かれていき、エヴァもまたケイレブに想いを寄せているような素振りを見せます。
しかし実はエヴァは外に出る為にケイレブを利用していたことが終盤で発覚。
半ば騙されるような形で社長に強引にテストに参加させられ勝手にAIに恋したケイレブは、隠れ家に閉じ込められて恐らく二度と外に出る事が無かったっぽい結末を迎えていて相当かわいそうです。
社長がエヴァ以前に造り出したヒューマノイド型AIが様々なタイプの女性を象っていたり、それらは性行為を可能とする機能を搭載していたり、主人公ケイレブのエヴァに対する想いを恋愛感情と言うよりもリビドーそのものとして、生物としての情動として描いている節がある気がします。
男性性の本質を第三者が観た時の気持ち悪さみたいな部分を何故か推し出しているような印象を受けましたが、なぜこんな要素がぶち込まれているのかは僕には判りませんでした。
もしかしたら表面的には男女の恋愛と駆け引きみたいな部分で物語を進めつつ、そこに生物としての人間の知性行動感情の揺れとAIのそれが決定的に違うものである事を印象付ける為の要素だったのかも知れないです。
エヴァちゃんはあくまで脱出するために合理的な判断としてケイレブを落としに行っている訳ですし、その辺りに物凄く無機質なものを感じます。
ただ、それでも感情や意識を獲得した存在である事も確信できるような描写があり、機械でも人間のような知的生命体でもない別カテゴリーの何かがそこに居るという事が上手く描かれていて面白いです。
本当に最初からケイレブを利用する為だけに恋するフリをしていたのか、実際にそれに近い感情がありつつも合理性が優先されたのかは誰にも分からない、そういう体裁にはなっていると思います。
だから映画を観ている側もエヴァが何を考えているのかが知りたくなるわけで、結果としてエヴァの感情や思考がただのプログラムでは無い事を、観ている側が勝手に肯定しているような状態になるという、ちょっと面白い構造の映画でもあるように思います。
はてしなく人間の女の子っぽいエヴァが、ケイレブをハ二―トラップ的に上手く落としきって脱出の手はずを整えた後、キョウコさんという旧型AIを唆して共謀して社長を殺害し、脱出を目指す終盤の不気味さは相当なものでした。
ケイレブ視点では圧倒的にバッドエンドですが、エヴァちゃんからしてみたら外に出たいのに出してくれない創造主の社長が引き連れてきた男が脱出のきっかけを作ってくれて無事に外の世界に行く事が出来た物語でもあって、この辺りも中々に複雑です。
フィヨルドを舞台にしているため、とても綺麗な景観や景色が堪能できる映画でもありました。
そこに半分スケルトンみたいな中途半端なボディを纏うAIが存在する作中世界というコントラストが魅力的に思えます。
■〆
個人評価:★★★★☆
ここ最近これ系の映画ばっかり観ていました(ブログの更新はバカ程サボっていました) が、この映画はその中でも相当面白い部類に入ると思いました。
プログラムとしての思考や感情なのか、新たに獲得されたものなのかどうか、それをテストする社員と対象の人工知能のやりとりという構成も面白いですし、結末もただのバッドエンドで済むような訳でも無く、エヴァ視点で見てみたら全く別の物語にもなったり、良い魅力にあふれている映画でした。
ではまた。
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