カメラを止めるな!(2017年先行公開・日本)やんわりとネタバレあり感想 この映画マジで何度でも観れる。色んな意味で。
こんなに楽しい映画観たのは久しぶりです。
■Introduction
日暮はある日、知人の吉沢から短編映画撮影の以来を受ける。
それは、新たに設立する衛星放送「ゾンビチャンネル」の開局記念に、30分ワンカット且つ生放送でリアルタイムアクトを行うという前代未聞の映画の撮影の打診だった。
30分の生放送映画のプロットは このようになった。
"廃墟でゾンビホラー映画のロケハンを行うクルー。
思い通りの撮影が出来ず怒りを顕わにする監督と、その姿に怯え、或いは呆れる俳優陣。
撮影を休止し、監督は廃墟屋上に姿を消した。
残された俳優陣とスタッフはとりとめのない話をして暇を潰す。
「この廃墟は、かつて旧日本軍が人体実験に用いていた場所だ」
そんな噂話をしていた最中、スタッフの一人に異変が起こる。
カメラマンの男が突如助監督に襲い掛かった。
そしてパニックが始まった。"
個性が強い俳優陣とスタッフに振り回されながらも、なんとか放送当日を迎える。
だが、俳優陣の一部が事故に遭い現場に来れない事が判明する。
果たして30分ワンカット生放送という前代未聞の作品は成功するのだろうか。
■感想
山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたクルーが本物のゾンビに襲われる、という展開で始まるこの映画。
冒頭の30数分は映画のクルーと俳優陣がゾンビに襲われていく様がワンカットぶっ通しで描かれます。
カメラは常にクルーの動向に注視し、彼らと共にリアルタイムで状況に追随していきます。
一方でクルー達の姿を撮影しているこのカメラの存在は第四の壁越しの存在のようなものであり、劇中の人物が実際に撮影した映像を追うようなPOVによる臨場感の演出とは違い、殆どの場合クルー達には認識されていないように描かれます。
しかし監督がこのカメラに向かって発言したり、カメラを撮影する人物がレンズに付いた血を拭きとる描写があったりと、違和感を覚えさせる演出が多々あります。
そうした数々の違和感が何か裏がある事を匂わせています。
しかし、いかにも過ぎるチープな演出と唐突なテンションの変化などが連続で絶え間なく押し寄せ、このパートの最後の最後まである種の混乱状態が続きました。
如何せん今までこんな中途半端に気が抜けたような演出の入る作品を観たことが無く、脳が状況を整理できませんでした。
最後、監督の声と思しき「カット!」のセリフと共に、ようやくこのパートそのものが何かしらの撮影を行っていたという事が明かされ、ここからこの映画の本質が顕わになります。
時間は一か月前にさかのぼります。
普段は再現ドラマのVTRなどの監督をしている日暮隆之の元に、新設される衛星チャンネル「ゾンビチャンネル」の開局記念ドラマの監督が打診されます。
それは、生放送でワンカット一発勝負の30分のゾンビ作品を放送するというものでした。
つまり、冒頭のゾンビパニックはこの日暮監督(冒頭の作中でも結果的に監督役やってます)が撮った作品を観ていたという事です。
この構造が面白いですよね。
冴えない監督がドタバタしながら作品を作り上げて最後に完成したそれを観るみたいなストレートな劇では無く、
最初の段階で作品を見せてから種明かし的にどういう風にこの作品が出来上がったのか描いていく形式。
そんな構造なので、冒頭パートに伏線がばっちり散りばめられています。
生放送ドラマの企画が動き出して、妙にキャラの来い俳優陣と撮影クルーとなんやかんやしながら作品を煮詰めていく過程も意外としっかり描いていました。
日暮監督のちょっとした苦悩パートみたいなものなんですが、これがことごとく笑いに繋がる描かれ方をしています。
そして生放送当日は、冒頭で描かれたドラマの裏側を今度は描いていきます。
一番の盛り上がりどころであり、意外性もかなりあります。
冒頭と結末で同じシチュエーションのシーンを別の位置から再度描くことで、冒頭のシーンで感じた違和感の数々に一気に答えを出してくれる上にサプライズも多数仕込まれてました。
サプライズというかアクシデントというかそんな感じの、生放送だからこそ起きてしまう予想外の事態とその修正の為に必死に頑張る日暮監督達。
作中劇からその作品の裏側の視点に切り替わるというのが良いですね。
この裏側を描くって要素がオーディオコメンタリー的な面白さも間接的に含まれている気がします。
ちなみに上田慎一郎監督のインタビューを読むと、実際に冒頭の30分ワンカットの撮影中に遭ったアクシデントもそのまま採用していたりするらしいです。
マジで30分(実際には37分らしいです)ぶっ通しでリアルに撮ってる訳ですもんね。
凄い。
映画の構造としてはちょっと特殊ながらもしっかり三幕で作られていて、且つ二幕目も重くなる事は無く終始楽しい空気が発揮され続けているのは凄いですよね。
シリアスや変な感動路線に意地でも飛び火させないというか、この映画に在るべき面白さをストレートに提供する事に全力な感じ。
でも一番何が凄いって、この映画は一度観終えたら直ぐに二周目を観たくなるような上手い構造をしている事だと思うんです。
二周目に真の楽しさが待っているような気がして仕方なくなります。
これ結構凄くないですか?
普通この手の「実はこれこれこうでした!」系の、伏線を巧妙に貼ってネタバラシがオチの一部になってる系の映画って、二周目しても面白さはちょっと薄まる事が多い気がしますし。
確かに二周目ならではの楽しみが在る映画は多いです。
しかし一方でそれらにはオチの衝撃に特化したような構造の作品が多いように思います。
だから、二周目では既知のオチを前提にした視点で観てしまうんですよ。
例えば『ファイトクラブ』とか。
『カメラを止めるな!』の場合、そもそも冒頭のシーンが劇中劇であり、その作品がどのように作られていたのか、裏側で何が起きていたのかという部分が物語のメインになっています。
表と裏の要素を混在させつつ、且つ作品自体がフィクションの中のフィクションをモチーフにした階層構造になっているので、二周目以降に注視したくなる要素がむしろ増えるという不思議な作品だと思います。
冒頭の30分ワンカットパートと、撮影の裏側パート、個人的には同じタイミングで別方向から複数撮影していたのかと思っていたんですが、
どうやら裏側パートは個別にちゃんと再現しながら再度撮影しているみたいなんですよね。
そう言う話を聞いちゃうとまして二周目とか観たくなります。
エンドロールでもマジな方の撮影の裏側とかも描いていたり、一つのシチュエーションでこれだけ多くの見せ方を(最後の最後まで)してくれる映画って中々無いと思います。
エンディング曲は流石にあれはどうかと思いますが!
アウォンチュバッ!
御託はもういいからそろそろ女の子の話しようぜ。
修学旅行の夜の会話みたいに意味も無く不毛なのに楽しいのが異性の話題。
いやだってなんかもう出てくる女性演者の皆さんが悉く凄く美しいというか可愛らしいというか。
もう極端な話かわいい子目当てで観に行ってもいいんじゃないのって。
個人的に、カメラマンの助手役をやっていた浅森咲希奈さんがキてるんですよね。
なんかめっちゃかわいい。
眼鏡の女の子に昔から目が無いってのもあるんですが、なんか、仕草含めめっちゃかわいい。
後なんか知らんけどやたらエロいアングルとかも多かった気がしますね。
ゾンビ映画、というかパニックホラーでは意味不明なエロアングルは割とありがちではあるので一応やっといた的な感じなのかも。
■まとめ
意外性だけで飛ばしていく映画なのかと思いきや全くそんな事はありません。
むしろ、ネタバラシ後から本編が始まります。
しかも終始ポジティブな空気の映画というか、小さいところから大きいところまでいちいち面白いです。
実際僕が観に行った劇場でも、本当に珍しい事に館内で何度も笑い声が響いていましたし、僕自身多分初めて映画館で声出して笑ってました。
いつの間にか自然に笑ってしまうようなナチュラルな楽しさ、面白さがたっぷり味わえると思います。
ではまた。