バリー・シール/アメリカをはめた男(2017年・アメリカ) さくっとバレあり感想
最近トム・クルーズの映画ばっか観てる気がする。
『バリー・シール/アメリカをはめた男』(American Made)
この映画は実在したパイロット、アドラー・ベリマン・"バリー"・シールを描いた作品です。
本作ではバリーがいかにしてアメリカ政府と麻薬カルテル、反政府組織などと関わりを持ったのか、その結果何が起きていったのかを結構忠実に描いています。
事実を元にしたフィクション映画というやつですね。
ただ一番フィクションな要素が強いのはバリー・シールの外観です。
たくさんの武器商人への取材を基に作られた映画『ロード・オブ・ウォー』であったり、
原作著者の半自伝小説が元ネタの映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』など、似たベクトルの映画は沢山あると思います。
やっぱりこの手の映画の醍醐味って一人の人間の半生をそこそこに効いたリアリティと共に追えるみたいなところだとは思うんですけど、
本作の大きな特徴として、やたらとエンターテイメント感の強い作風に仕上がっている点かなと個人的に感じました。
冒頭のユニバーサルのロゴの段階から、80年代を彷彿とさせる演出の応酬で映画の雰囲気を意識させてくれます。
そして恐らく実際の物と思われるニュースや会見の映像がカットインされたり、そこに合わせるかのような質感を出した本編の映像であったり、劇中出てくるビデオカメラやテレビ、車など兎に角やたらと80年代っぽさを意識させる演出が多いです。
世界観への導入の為の演出でありながら、同時にこれらがお遊びみたいな感じにも思えて映画全体の空気感がとても不思議なんですよ。
当時を再現した映像というよりも、現代の映画で当時っぽさを出す事に全力向けてるような面白さ。
そして主人公であるバリー本人もなんか不思議な人ですね。
真面目そうなのに行動も思考も軽い感じ。でもバカでは無いみたいな。
バリーにとっての最初の転機となる出来事が、シェイファーと名乗るCIAの男との出会いです。
ここでシェイファーから極秘任務を依頼されるんですが、かなりこう、あっさりしたこれを承諾します。
次に、麻薬カルテルの方々から密輸の依頼をされますが、こちらも提示された報酬を聞いて直ぐに詳細の煮詰めに入るフットワークの軽さを見せ、あっさり密輸も始めちゃいます。
その後も、やたらとフットワーク軽めに重要な決断をホイホイしていって、いつの間にかえげつない金持ちになってましたという事で、なんだか見てるこっちも良くわからない気持ちになります。
しかしよくわからないながらも、そこに不思議と面白さがあります。
彼がどのようにして成功していったのかを年代と共に追っていく構成で、その時々の出来事と彼が関わりを持った組織などを描いては次の時代へという流れが繰り返されます。
映画の終盤、バリーの資産は押収され彼自身も麻薬カルテルに命を狙われ、
そして遂に彼は射殺されてしまいます。
ですが、この終盤ですら重い空気が殆ど感じられません。
エンディングもやたらとサイケな色調の映像で、しかもこれまたアナログっぽい質感で最後の最後まで80年代推しでした。
バリーの人生は山あり谷ありというよりもひたすら成功し続けて、最後に一気に散ったような感じなんですね、この映画を観る限り。
そう言う部分も少し異質です。
あと、アメリカをはめたというよりも、アメリカにハメられつつも多方面に関わる利害関係の構築によって最後の最後まで成功し続けていた人って印象があります。
良い感じに楽しめる映画でした。
ではまた。