青鬼 (2014年・日本) バレあり感想 鍵を握るのはドアバグなのか。『青鬼』を知っているのなら、この映画はとても楽しめる。
『青鬼』って実写映画化されてたんですよね。
青鬼は元々RPGツクール製のフリゲで、ニコニコ辺りに投稿されたゲーム実況系の動画で人気に火が付いて一躍メジャーになったゲームです。
『ゆめにっき』という先行例もあり、RPGツクールやフリーゲームに再度注目が集まるきっかけにもなりました。
そういやフリゲが映画化された例ってあんまり聞きませんね。
当時から実写映画化されたという話は風のうわさで聞いていましたが、どうせしょうもない事になってんだろうと思ってチェックする事もありませんでした。
そんな実写版青鬼、Hulu漁ってたら見つけちゃったんで、観てみました。
あの、やっぱあれですよ。
しょうもない しょうもない 言ってるだけで食わず嫌いしてる奴が一番しょうもないですよ。
そんな事を学べた映画。
『青鬼 -アオオニ-』
■ストーリー ※ほぼネタバレ
転校して早々にいじめのターゲットにされてしまった少年シュンは、ある日河川敷で同級生の杏奈ちゃんに自作のフリゲを披露した後、いじめの主犯でありゲイみたいなファッションセンスのDQN卓郎に流れで殺されてしまう。
しかし特に自分が死んだとは気づいていないシュン。
そのまま幽体の状態で流れで卓郎の後についていき、不気味な洋館、外観は完全に昭和日本の無個性建築のそれだが名目上は洋館とされる場所へ辿り着く。
洋館には卓郎のほかに、キョロ充のタケシ、すっげえ美少女の美香、そして奇人ヒロシの三人が流れで入り込む事に。
ついでに何故か幽体のシュンを認識できて会話とかもできちゃう杏奈も流れ的に館へ入り込むことになった。
洋館には青鬼という化け物が居て、杏奈達に時々襲い掛かってきたりする。
それを見て幽体のシュンは自分が作ったゲームと全く同じ状況である事に気づき、杏奈達を脱出させるために必死にアドバイスを繰り出すが、タケシも美香も殺されてしまう。
ついでにシュンも自分の死体とエンカウントした事で成仏してしまった。
何となく卓郎も死んだあと、ヒロシがまるで主人公のような勇気と男気を見せ杏奈を青鬼の魔の手から救う。だがヒロシも命を落としてしまった。
最後の一人となった杏奈の元に迫りくる青鬼。
扉の向こうから狂ったように自分を呼び続けるシュンの声。
杏奈は生前のシュンとの河川敷での会話を思い出す。
そして杏奈が扉を開くと、辺りが強い光に包まれる。
気づいた時、杏奈は河川敷でシュンと一緒にフリーゲームをプレイしていた。
これがあの大人気フリゲ『青鬼』の実写映画のおおよそのストーリーだ!
■感想
いやこれ『青鬼』のファンに向けた映画だと考えたら、正直かなり楽しめるんじゃないですか?
もちろん大前提の原作はゲームの青鬼なんですが、どうやら青鬼って小説版もあるらしく、そちらとの関連も強い映画だそうです。
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僕はゲームの青鬼しか知らなくて、それも多分だいぶ古いバージョンなんですが、そんな僕でもこの映画はかなり楽しめました。
なので、ゲームの『青鬼』を知ってさえすれば、この映画は楽しめるんじゃないかと思います。
・原作前提。完全にファン向けの映画だと思いました。
まずBGM。
ゲーム版の青鬼で、青鬼に追われる時に流れがちなあのBGMがしっかり流れるのは嬉しいですね。
あのBGMの印象って凄まじくて、これが流れた時に青鬼感が物凄い演出されていました。
また、割れた皿とか、会談の踊り場にある意味深な額縁。血に塗れたピアノの鍵盤など、印象的なオブジェクトはほぼ完全に再現されていたと言って良いと思います。
奇妙な人形とかもちゃっかり出てきてましたし。
劇中では触れられていませんでしたが。
またこの映画、最初は『青鬼』の流れそのものを実写化して追っていたような作りでしたが、
シュン君がこれが自分の作ったゲームと同じだと気づいてから、ギミックをどんどん攻略していく流れにかわります。
この辺りのRTA感は中々。オニンピック。
でも、鍵盤に書いてある暗号とか、ゲーム制作者のシュン君ならわざわざギミックを攻略しなくてもわかるんじゃないの?って思ったり。
流石に無粋か。
あと、たけし城ね。
ビートたけしの往年の人気バラエティの事では無く、青鬼に出てくるサブキャラクターたけしが籠城しがちなロッカーの俗称です。
これをしっかり映画でもやってました。
なんというか、本作はかなり良いラインのネタを拾ってくれているように思います。
あざとさもあるんですけど、「あのシーンとかあのイベントとかあるのかな」っていう部分はかなりしっかり拾っていると思います。
だからこそ、ファン向けな色が濃くなりすぎて青鬼を知らない人を置いてけぼりにしてしまうのかもしれません。
あとは元ネタ知っていると、ヒロシが死んだ時点で中々の驚きを味わう事が出来ますね。
ヒロシ、本来は主人公ですからね。
フリゲ版の青鬼ではこのヒロシが主人公であること自体が一つのジョークみたいな扱いでもありました。顔グラ的な意味で。
青鬼そのものの再現度についてですが、これはこれでアリかと思います。
元ネタであるゲーム版の青鬼って、こう、淡々と追ってくるから怖いみたいな部分が少なからずありました。
それが、この映画の青鬼はもう物凄い剣幕で追ってくるんですよね。
前歯とか剥き出しにしちゃったりして。
アヘアへ妙な動きキメながらすげえ追ってくる。
狂犬みたいな感じですよ。
ここは評価が分かれそうですが、実写映画というフォーマットを考えた時、淡々と追ってくる頭デッカチなブルーベリーの映像化ってかなり色が付け辛い気がします。
BGMやカメラワークで雰囲気を作るのにも限界ってあると思いますし、何よりどう頑張ってもこの作風だと地味になりそうです。
なので、こういう改変は実写ながらの要素としていいんじゃないかと思います。
ただ例えば、実写版青鬼がファウンドフッテージ物のような作風だとしたら、むしろあの淡々とした感じがリアリティがあってよいかもしれません。
こういう部分ってやっぱり作風によりけりな気がします。
・この映画のオチのシーン。元ネタは個人的にはドアバグだと思ってます。
前項とも少し内容は被りますが、改めて。
青鬼を知っていれば楽しめる、裏を返せば青鬼を知らないと楽しめないと思います。
こういう言い方をするのは、この映画をホラー映画の領分で考えた場合、出来の良い映画とは言えないと思うからです。
青鬼のストーリーやキャラクター達を知らずこの映画を観た時、ラストの夢オチのような展開はあまりにも無粋に見えます。
この映画のオチは青鬼を知らずに観た場合、誰が生き残るか、最後にはどうやって洋館を抜け出すのかという部分を台無しにしちゃってますし。
ところが青鬼を知っていると、このラストシーンは中々に面白い気がします。
あくまで個人的な解釈を前提としているので、個々からの話は万人に同意を求められる物ではありませんが。
シュンが杏奈に自作ゲーム『青鬼』をプレイさせるシーンが映画の最初の方に出てきます。
シュンが殺される直前のシーンですね。
ここで、ゲームに詰みかけた杏奈に対してシュンが「諦めなければ道が開ける」的な事を伝えます。
ゲームの描写としては、扉の向こうに青鬼が待機していて、部屋にはその扉以外の出口が無いような状況です。
そしてシュンは青鬼が待機している扉へキャラクターを誘導し、扉を開けるように促す訳です。それが隠された打開策だと。
これドアバグじゃん。
ドアバグ。
ゲーム『青鬼』における有名なバグ技の一つであり、青鬼をやり過ごす為に、青鬼が部屋に入ってくるタイミングに合わせて操作するキャラを部屋の外に出させることで、青鬼の接触判定を無効化させることのできる技です。
青鬼は鬼ごっこです。
触られる=死なので、このドアバグはかなり有用です。最新バージョンとかで出来るのかは分かりませんが。
劇中ではバグなのでは無く、ちゃんとシュン君がプログラミングした設定となっています。
ですが、劇中でちょっとしつこめにシュン君がこれをしっかりプログラミングした事をアピールしている事が、ドアバグが元ネタなんじゃないかという僕の考えに拍車をかけてくれました。
個人的かつ突飛な解釈ですが、そう考えて映画を観てみるとオチのシーン中々面白く感じます。
ドアバグしたら青鬼の追走から逃れられたどころかタイムスリップ的な事しちゃったんだから。
個人的なオチの解釈としては、あれは夢オチでは無く時間逆回転超リワインドしてしまった状態だと思っています。
夢オチ、妄想オチでは無さそう。
ただ、夢オチだろうがタイムリープだろうが、このオチ自体が映画のテーマやストーリーにどういう意味を齎しているのか僕には全く分かりませんでした。
だからこそ、あのラストシーンはドアバグのオマージュだという解釈をするしかなかったんだ。
やっぱりぶっちゃけオチは弱い気がするぞこの映画!
・追体験のような要素も考えられているのかもしれません。
この映画に於いてはヒロシもまた他のキャラクター同様にサブキャラクターとして位置づけられました。
主人公のシュンと杏奈の二人はゲームには居なかったキャラクターです。
シュンはこの映画に於いて、フリーゲーム『青鬼』の製作者であり、杏奈はその青鬼のプレイ経験者です。
それ故に洋館内に設置されたギミックの解き方もシュンは知っており、杏奈にアドバイスをすることで攻略を進めることが出来ます。
つまりこの映画、青鬼という作品の追体験という要素も含まれていたりするんじゃないかと思います。
原作のネタを映画内にファンサービス的に詰め込むだけでは無く、それを知っている人物、存在そのものがメタみたいなキャラが映画内にも居て、実際に攻略を進めていくという形式に落とし込んだのは僕はかなり楽しめました。
最も、何故シュン君が作ったゲームが現実(と思われる)世界に顕現してしまったのかという部分については、劇中で特に触れられる事はありませんでした。
ここは少し残念です。何か大オチ的なものを突っ込んでくれても良かったのかと思います。
やたらとキャラクターに合わせた視点が出てくるのも、追体験を狙ったのかもしれません。
最も、キャラクターに合わせているカメラがPOVとかでは無く、登場人物の顔を主に映しているのは如何なものかと思いましたが。
自撮り系動画やバラエティ番組のロケVTRにありがちな、顔のリアクションだけめっちゃ詳細に見れるやつ。
求めているのはそういう視点じゃない。
ついでに言うと、劇中で青鬼の主観視点は登場するんですよ。
化け物側の視点を見せてしまうのは、ホラーではやっちゃダメな気がします。
追う側に恐怖なんて無い訳ですし。臨場感なんて生まれ無い気がします。
『エイリアン3』で通った道ですね。
原作に出てきたキャラクター達と共に、実際にその場に居るかのような感覚を味わえるような作りに寄せていれば、ファンからすれば更に面白い映画になっていたかもしれないです。
・その他。
青鬼側の視点の描写の中で、青鬼の視点そのもののシーンと青鬼の自撮りポジからのシーン、そして三人称視点のシーンの三つが登場します。
その三人称視点のシーン、青鬼のプリケツを眺めるだけになるのでシュールでめっちゃ面白いですよ。もうそこがこの映画の見所でもいいよ。
あと、本作で美香を演じているの、古畑星夏さんなんですね。
『咲-Saki-』の実写版ドラマ及び映画で部長の久を演じていて、そこで知ったんですけど、
マジでかわいくないすか?
元々咲のコミックスの頃から部長が一番好きだったんで、その影響かと思ってましたが、今回青鬼で演じた美香も可愛いナンバーワンだったんで完全にかわいいですよ。
ワンチャン古畑星夏さん目的でこの映画観るまでありますよ。
何の話!
■まとめ
この映画は青鬼のファンに向けた要素がたくさん詰まっていて、それを前提とした映画だと思いました。
だから、青鬼を知っている人からするととても良い映画に思えます。
しかし、それらは拾われたネタの評価という観方も出来てしまい、映画としてこの作品を考えた場合、微妙な部分も散見されると思います。
なによりラストシーン、映画のオチの解釈がかなり好みが別れそうです。
元ネタ前提の作品として、青鬼がどういうものか知っているのであれば楽しめるかと思います。
本編の時間も一時間ちょっとだけで割とあっさり観れるのもいいですね。
逆に、青鬼を知らない人からしたらあまり楽しめない映画だと思いました。
青鬼、ちょうど今アプリとしてオンゲー化したものがリリースされるみたいですね。
オンラインで青鬼から逃げ切るらしいんですが、どういうシステムのゲームなのか気になります。
あと、『青鬼 Ver.2.0』っていう映画もあるんですね。
しかもファン評価としてはこっちの方が若干評価高いらしいじゃないですか。
フワッティが出てきそうなパッケージだし、なんとなくその理由も分かる。直ぐ観る。お前らも観よう。
ではまた。