ゼイリブ(1988年/アメリカ) ネタバレあり感想 資本主義社会の違和感や問題点をSF要素を混ぜて視覚化した名作。
この映画の感想は一度書いておきたかった気持ちがある。
『ゼイリブ』
(THEY LIVE)
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予告:
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
不思議なサングラスを手に入れた男は世界の真実を目の当たりにする。
■感想
普段人々が眼にしている世界は虚構に満ちていて、実はある種の支配層によって人々は無意識に操られ家畜化されている、という世界観をベースにした映画。
世界観も何も現実の資本主義の構造実体そのものなんですが、支配層を宇宙人という立ち位置に置き換えていて、彼らは人々の生活に潜み普段はその実体を見せない存在として描かれます。
これが凄まじい不気味さを醸し出している点が個人的に物凄く好きです。
市民を騙し、必要のない物を買わせる為に労働させ、必要のない娯楽で楽しませ、また労働に従事させるというサイクル。
これを支配層が仕向けているという構図から感じられる、支配層による人間の扱い方、見方を、彼らを宇宙人(異物)と置き換える事でストレートに視覚的に分かりやすく描いている点が特徴で、資本主義社会に対する明確な批判の意図が感じられます。
難解さを全く感じさせないように、社会風刺をエンターテイメントの範疇に落とし込んで成立させている感じ。
作風自体も個人的にとても気に入っています。
普段何気なく接している人々の中に実は異星人が紛れ込んでいる不気味さ、広告や商品が単純直接的なメッセージに塗れているモノクロの街並み、そして知らぬ間に洗脳され監視されている市民視点と、真実を知っている人々との視点のギャップ。
そんなビジュアルのインパクトや設定の面白さにとても魅力を感じています。
「人間の中に人を象った異物が紛れ込んでる」系の映画観ると、僕は大概そこにゼイリブを感じています。
『遊星からの物体X』のような、誰が入れ替わっているのかわからない疑心暗鬼とはまた違った魅力があると思います。
紛れ込んだ異物から洗脳されている人々と、それに気づき抵抗しようとする主人公達という構図、そして最終的に宇宙人たちの毒電波を阻止して人々の洗脳が解かれる瞬間が描かれ幕を閉じます。
加えてアクションシーンも豊富で、主人公に本物のプロレスラーを起用してまで格闘シーンがぶち込まれていたりと、幾分そのテイストは軽く、分かりやすく、そして面白いと思います。
更に言えば、仮想現実という昨今のトレンドや、世界シミュレーション仮説といった都市伝説方面の要素が含まれた映画でもあります。
30年以上も前の映画にもかかわらず、むしろ現代人にとってはタイムリーに感じる要素やネタがてんこ盛りな点が面白いです。
主人公の男が、大統領すらも宇宙人になっている事を知って以降、吹っ切れた様に宇宙人たちに喧嘩を吹っ掛けるシーンの後先考えてない感が好きです。
大味すぎる展開な上に、宇宙人サイドの方々もそんな突発的な市民の暴走にわりと翻弄されていたりして、そこそこの科学技術を持った上位の存在とは思えない謎の親近感を醸し出していて面白いです。
■〆
個人評価:★★★★☆
未だに色あせない、というよりこの映画で描いていた資本主義社会の問題点、或いは闇とも取れる部分は、むしろ現代では加速しているようにも思います。
だからこそ未だに強い支持を得ている映画なのかもしれません。
そういったメッセージ性の鋭さも好きなんですが、それ以上にこの映画自体の設定やビジュアル面がやっぱりたまらなく魅力的に感じます。
サングラスを通して観える真実の世界の奇怪さと、それが真実であるという気持ち悪さが、何とも言えない面白さに繋がっている感じがして凄く好きなんですよね。
この映画は2020/5/8現在、下記の配信サービスで視聴できます。
ではまた。