スーパーサイズ・ミー(2004年/アメリカ) ネタバレあり感想 ファストフード食いながら観た。
ファストフード食べるのは控えようと思ったまる
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■概要
果たして本当にファストフードは身体に良くないのかどうか、一ヶ月間マクドナルドのメニューにある食品のみで過ごす事で検証しようとする男の姿を収めたドキュメンタリー。
■感想
アメリカの食品業界全般に対する問題提起を一ヶ月マクドナルド生活を通じて描いたドキュメンタリー映画って感じでした。
健康を阻害されたとして、二人の少女がマクドナルドを訴えたものの少女たちは敗訴、この出来事がきっかけとなモーガン・スパーロックが、実際に毎日毎食ファストフードのみを食べたら身体にどのような変化が起こるのかをチェックしながら、30日間の彼の生活をウォッチングするという流れです。
当時のアメリカマクドナルドにはスーパーサイズなる暴力的なレベルのビッグサイズにサイドメニューを変更できるプランがあり、モーガンは店員さんからそれを勧められた場合有無を言わさずスーパーサイズを頼まなければならないという縛りを設けていました。
毎食マクドナルドに加えてこの縛り要素、むしろ確実に身体を壊しに行っているとしか思えないです。
しかもモーガンは実験前の時点で非常にバランスの取れた食生活を送る超健康体の男であり、検証二日目にスーパーサイズを食した時点で嘔吐していしまうレベル。
検証方法がバカ極端すぎて、肥満や健康知識について意識されていなかったらしい当時のアメリカ社会への批判になっているのか、それとも単にエンターテイメント性を重視しての事なのか、良くわかりません。
そんな極端な方法じゃ不健康になるに決まっていると思っていたら、マクドナルド側の見解(たぶん多くは裁判の時のものだったと思うんですが)として、マクドナルドは健康食でどーたらみたいなのも出てきて、こちらもこちらで謎に意地を張っている故の意味不明な対立構造が成立しているのが一番面白いと思います。
裁判やりまくるお国柄故に仕方ないのかもしれませんが、ファストフードに限らずどんなものだって食べ過ぎたら身体に毒でしょう。
とはいえ本質的にこの映画で描いていたのは、アメリカ社会が内包する健康意識や知識に対する水準の低さという問題点だったと思います。
検証方法自体は極端ですし、身体に悪いファストフード代表として矢面に立たされたマクドナルドの見解も決して自信を持って宣言できるような物ではないんですが、そういう部分すら結局問題の一端でしかない事がよく描かれていました。
学校によっては給食でファストフード程度の物が提供されていたり、体育の授業を週一回45分しか行っていない学校がある事も明かされていたりと、子供の頃から運動と食事の適切なバランスについての感覚を身に着けられない環境になっている事が良く分かります。
それに加えてファストフード店の子供の誘致を狙ったような施策の存在など、子供の頃から生活にファストフードが浸透しすぎている事が大きな要因である事が指摘されていました。
そこに健康知識の乏しさが加わったことで、最強の肥満国家が完成するという事なんでしょうね。
作中で、カロリーとは何か?という質問に明瞭な回答が出来た市民が専門家を除くと0だったかのような描写がありました。
二人組の男の子たちが「スーパーサイズなんて食ったところで30分走って腕立て伏せでもしておいたら問題ない」みたいな事を言っていて笑いました。 数年前の俺だわこれ。
ただ流石にこの描写自体は編集によって意図的に市民の無知を演出しているとしか思えませんが、食生活に対する知識の乏しさを伝えたかったことはよく分かります。
最終的にモーガンはドクターストップ寸前まで身体がボロボロになりながらも一ヶ月間のマクドナルド生活をやり遂げるわけですが、毎日毎食食べていなくとも、定期的にファストフードを食べてしまう人も同じように健康被害の危険が高まっているから気をつけようね!みたいなところに着地していました。
ちなみにモーガンは検証終了前後でマクドナルドと連絡を取ろうとして鬼電していたものの、担当者と接触できずに最後まで終わっていました。だからお互いに極端なんだって。
健康被害なんて起きないよ!というマクドナルドと、毎日毎食マクドナルドを食べ続けて身体を壊しかけた男の戦いの記録だと思って観るのがいいかもしれません。
たしかにその過程でアメリカの抱える多くの健康問題について描かれますし、本質的にはそういった食文化に対する警鐘を鳴らすような内容ではあるんですが、現実的な試行検証という訳でも無くエンターテイメント性がめちゃめちゃ強いやり方をしているので、わりと気楽に楽しむくらいの感じが一番良いと思いました。
■〆
個人評価:★★★☆☆
エクストリーム肉体検証企画としても、アメリカの抱える国民の健康と食に関する問題がよく分かる映画としても楽しめる良いドキュメンタリーだと思いました。
何より凄いのが、本編時間の多くの場面で食品とそれを平らげる人間の姿が描かれまくるのに視聴中にお腹が空いてきたり口さみしくなる事が無かった点です。
ある種の気持ち悪さを覚えるような演出が多いからなのかもしれませんが、何はともあれ食に関して改めて考える機会になるような、良い映画だと思います。
現在、以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。