七つの会議(2019年/日本) ネタバレあり感想 会社の為に人間性を捨てた人たちのお話。
漫画原作に拘る必要性が皆無な事に気づいてからの俺の動きは速かった。
同名タイトルの小説作品を原作とした実写版。
原作者は『半沢直樹』や『下町ロケット』の作者でもある池井戸潤。
『七つの会議』
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
中堅メーカーで巻き起こる不自然な出来事を追う内に日本企業の抱える体質的な闇に直面する。
■感想
日本の会社組織と社員が抱えがちなストレスや問題点を大幅に絡めて描かれる隠蔽工作サスペンス。
社会派エンタメらしいリアリティのある描写と、フィクションらしい展開が良い感じのバランスになっていて、ほどよくあるあるを楽しみながら、日本企業の狂った風習をそれなりに誇張しつつ冷静に描いていたように思います。
中堅メーカーがやらかした不祥事を、責任を下に下に押し付けながらなんとか隠蔽しようとしたものの、下の反逆に遭い親会社にその全貌が知られ、しかし親会社も不祥事を隠蔽しようと試みたので、主人公の一人である八角がその全貌をリークする事で正義の鉄槌を下す、という内容。
詳しく書くと物凄い事になってしまうんですが、とにかくこの映画では責任を下に押し付けようとする人たちの嘘が物語の中心にあるイメージです。
ほぼ全員悪人状態の中で、悪人っぽくミスリードされていた八角が、劇中では一番まともな倫理観を持ち続けていたことが発覚、この八角がもたらす錯覚が何より組織を優先してしまう日本特有の風潮に対するアンチテーゼみたいな感じになっている気がします。
エンドロールでの発覚のセリフが凄く印象的です。
組織に敵対したり離反する事は死と同義みたいな、忠義を尽くしてこそ武士の道的な、そういう侍由来のスピリットが日本を先進国たらしめた一方で、その価値観が組織内で起きた問題に対処できない原因でもある、みたいなニュアンスの事を言っていました。
実際はもっと皮肉っぽくキレッキレに伝えているんですが、つまり今の日本企業の風潮と体質は、そう簡単には是正されないよね、っていう事がものすごく良く分かります。
八角さん、普段は鬼程仕事をしないのに実は物凄く誰かの為を思って心を殺して頑張っている良いおじさんで、しかもかつては社内トップクラスの実力を持つ営業マンだった、というゴリゴリのヒーロータイプで良い感じでした。
良い感じの嘘臭さと言うか、このくらい自分を貫けないと組織内の不正を暴くのは難しいよねみたいな、そういう現実感と照らし合わせてみると面白いキャラクター設定だと思います。
八角を演じた野村萬斎の演技が本当におかしい事になっていて、何故か今作では誇張され過ぎたサラリーマンみたいな演じ方をしています。
香川照之も同じで、見栄切りとハッタリ全開な表情作りが凄い上手い役者さんですし、これやっぱ現実的に有り得なさそうな雰囲気を匂わせる為なんじゃないかなって僕は思いました。
日本企業の体質や問題点を描いた作品ながらも、キャラクター面でリアリティを意図的に拒絶しているように感じました。
■〆
個人評価:★★★☆☆
下に責任を押し付けて、御上は嘘で乗り切る、この理不尽をエンターテイメントの中で自然に描いています。
社会人としての頑張り方が分からなくなった時に、こういう作品は重宝すると思います。
現在、以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。